2009年9月17日木曜日

まぶぅ先生が黒湯の闇に霞んでは消え霞んでは消え

 昨年から大学の福利厚生が若干向上し、シャワーが設置された。<関係者以外立ち入り禁止>と書かれた札の立つ地下へと降りて行ったところにぽつんとあるユニット式のシャワーだが、校舎を出なくても良いし、朝一で浴びることもできるし、なにしろタダ、ということで割と重宝している。さらに、部員の減少に伴い、ここ最近は皇居をジョギングる回数が減ってしまったこともあり、銭湯に行く機会がめっきり無くなって久しい。
 ただただトレースをする生活の中で、時々ふつふつと銭湯慾が沸き上がるものの「風呂入って汗かいて、電車で神奈川県に帰るってどうよ?」と思うと瞬時に高ぶった気持ちも萎えてしまい、銭湯慾を満たせない日々を悶々と過ごしていた。

 そんな時に、中学の頃のまぶぅ先生(本名忘れた)がいつも、夕暮れの生徒会室で汗だくで呟く言葉を思い出した。「ねぇ~、帰りに温泉に寄ってこうよ~(脂)。」
 
 当時、僕の中学は横浜市で一番標高の高い場所に有り、反対に成績が低く不良が多いことで有名だった。4階のベランダから汁入りカップラーメンやレンガ片や濡らしたトイレットペーパー塊を市道に向って投げるのが日常茶飯だったので、いまでも歩行者保護の為に防護ネットが市道側のベランダを覆っているような学校である。

 まぶぅ先生は国語の先生で、小林亜星と裸の大将の芦屋雁之助を足しっ放しにしたまんまの風貌(坊主にメガネで、へそ出し半裸で耽美派独身貴族)の当時30代半ばの生徒会の顧問だった。まぶぅの一番良いところは、「常に自分の出自を意識し、お袋に感謝していたい」と言い、生徒会室の片隅に自らが数十年前に産湯に浸かったカナダライを置き、放課後には、その家宝とも言えるカナダライでドリフ顔負けのタライ落としのギャグ芸を見せてくれることだった。僕らの中学の生徒会活動の大部分は「まぶぅっ!つまらねえよっっ!!」と言う為にあった。
 
 まぶぅは、汗っかきなので年中タオルを肩にかけて、汗を拭きハァハァ言っとる。そんなまぶぅが、Rの付かない月の夕方に、同僚の先生に必ず言っていた口癖が「温泉寄って帰ろうよ~(汗)」だった。僕たちは賭けベーゴマやチョロQに熱中している振りをしながら、そんなまぶぅを徹底的に無視していた。


 
 銭湯に若干飢えていた僕が思い出したのが、まぶぅの言葉だった。「近所に温泉があるのか?」と探してみると、あるある。何の変哲もない、強いて言えば若干古ぼけたと思っていた銭湯が、どれもこれも黒湯の温泉ばかり。蒲田から横浜にかけての海よりの地域には、古くから黒湯を引いた銭湯が点在していることが分かった。
 早速、先日は家から最寄の銭湯「黄金湯」に帰りに寄ってみた。客は僕一人で、いつまでも頗る爽快だった。家にも風呂はあるのに、わざわざ銭湯に行くという行為の無駄さがとても楽しく、万が一に湯当たりしたとしても家が近所という安心感。またしばらくしたら行こうと思う。

 ありがとう、まぶぅ!!

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